初心。

私が音声記録を研究しようと思ったのは、音声の文字化作業がきっかけだった。
シンポジウムを録音し、書き起こしし、その録音媒体とデータを管理する…。
その作業をしやすくするために、メモをひたすら取るようにしていた。


もともと、メモは書けるだけ書いてしまう(要点だけメモ…という器用なことができない)性格だったけれども、
それにもましてきちんと取るように意識した。
自分が重要だと思ったら二重線とか引けばいい。録音は、咳払い一つで声が潰れる…と思って。


結果、乱筆の膨大なメモが出来上がる。書くのに必死な割に、結論だけが聞き取れないこともある。
勿論、書き間違えも沢山。
でも、いつか音声が聞こえなくなったとしたら、検証はもちろん必要だけども、そのメモが役に立つかもしれない…そう思っていた。


今日、あるラウンドテーブルに参加した。同じテーマで三回目。
パネリストの中のお二方は、以前から存じ上げていた方。
そのお一方に先週「伺います」と言ったら、あの時のメモが役に立って…と言ってくださった。
そのメモは、二回目の様子を書いたもの。何かのきっかけでコピーしてお送りしていた。
正直、お送りしたことは、忘れていた。


今日、パネリストのテーブルの隣に聴講者が座って可とのことで、その方のお隣に座らせていただいた。
授業を受けるために中座しなければならない時「今日はありがとう。あのメモが…」と再度言ってくださった
びっくりしすぎて、あいまいに会釈することしかできなかった(なので、一言一句は記憶がない…こういうところは、うかつ)。


地下鉄の駅に向かいながら、よかったなあ…と思いながら歩いていた時、ふと気付いた。
これはまさに私の初心そのものだ。


一瞬で消えてしまう人の思いや言葉を「書く」ことで永遠にして、必要な人に届けたい…
(今は音声そのものも残していきたいけれども、当時は文字化することが最優先だった)。
それが初心だった。すっかり意識しなくなっていた。
こちらこそ、感謝しなきゃと、思ってます。ありがとうございます。